特別交付税の分析その3(本篇)

 湯之上先生の論文読了。
概要 特別交付税について官僚機構(総務省出身者)の恣意性を分析。現役官僚は、先輩である総務省出身者の知事に移転を行うかというモデルにもとづき回帰分析し、災害等への対処や、人口や面積という普通交付税と同様の配分傾向があるものの、総務省出身知事に、しかも当選回数が多いほど、多くの配分があることが、説得的に述べられている。ただし、データは、1997年から2000年の都道府県配分の特別交付税

コメントというか、自分が追試したいこと(氏のよってたつ「公共選択」論では、いわずとしれた証明ずみ仮説なのかもしれませんが)
1)データが、1997年から2000年度の4ヵ年度で十分か。
2)東京都が除外されているが、特別交付税は東京都も配分されており、除外しないほうがよいはずではないか。
3)「当選回数」について、非出身者についても、当選回数が多くなると配分が多くなることはないか(知事以外の出向官僚については、総務省出身者と非総務省出身者とにわけて、非総務省非出身者との相関はないことが示されている)。
4)特別交付税は、地方交付税総額の6%でキャップがはまっているので、「予算配分最大化」は、ゼロサムゲームになる。総務省出身知事への厚い配分は、非出身者への薄い配分となってあらわれる。そこで、たとえば、長野県田中知事の登場など、総務省出身者から非出身者にかわったケースで、このような劇的な変化が観察できるかどうかをみる必要がある。
5)官僚は予算最大化を求めるので、総務省官僚の将来像である知事への移転の最大化をめざす、というモデルそのものに弱点はないか。
5−1)知事は政治家であるなら、予算最大化より、再選・支持最大化をめざすはず。そのために予算最大化は必要条件かどうか。
5−2)キャリアに絞っても、知事をつとめるのは10数名いる同期入省のうち1名いるかいないか。これまでも総務省出身知事には厚く配分する伝統をうけ、後輩達もそのように行動するという仮定は、官僚在職時に通じる「知事になっても使えるお金がふえればいいよねえ」という期待であって、他の総務省天下り団体にも通じるものがあるか。
5−3)総務省出身者の当選率は下がっていると推測されるところ、当選死守を行うためには、予算最大化を強めるのか、非出身者へもばらまいて安全弁とするのか。後者の場合、かならずしも出身知事への移転を高めることにならない。
5−4)鳥取県前知事の片山氏の「末期」のように、総務省批判をする総務省知事の存在をどうモデル化するか。総務省には少ないようだが「脱藩」官僚とか、群馬県前知事の小寺氏のように、20歳代で県庁に出向しているのをどう評価するか。